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生活に困るほどお金がなくなった時、まずすべきこととは?【沼田和也】

『牧師、閉鎖病棟に入る。』著者・小さな教会の牧師の知恵 第10回

 

 じっさい、お金は大事である。宗教者だからといってお金に執着するなど愚かなことだ」とはとても言えない。イエス・キリストはたしかに「あなたがたは、神と富とに仕えることはできない」と語った(ルカによる福音書1613)。だが、そのほんの少し前には、イエスはこうも言っている。

 

 「そこで、わたしは言っておくが、不正にまみれた富で友達を作りなさい。そうしておけば、金がなくなったとき、あなたがたは永遠の住まいに迎え入れてもらえる。 」(ルカによる福音書 16:9)

 

 よりにもよって、不正にまみれた富で友だちを作れときたものである。宗教家のイメージからは程遠い、大胆な戦略家イエスの姿が垣間見える。イエスは人々の苦しい現実を無視して、お花畑の天国を語ったのではなかった。じっさい、のちにイエスを裏切ることになる弟子のユダは、弟子集団の会計係をしていたようだ。イエスとて、霞を食って生きていたわけではない。自分の教えを有効に語り伝え、悩み苦しんでいる人、飢えている人、病気の人に適切なケアを行うにあたっては、人々から寄付を募り、そのお金を弟子たちに管理・運用させなければならなかったその会計管理者がユダだったのである。

 また、イエスをめぐってこんな事件も起こった。ある女性が心からの信仰でもって、高級な香油をイエスの頭に注いだのである。そのとき、周りの人々は憤慨した。「なぜ、こんなに香油を無駄遣いしたのか。 この香油は三百デナリオン以上に売って、貧しい人々に施すことができたのに。」(マルコ14:4)貧しい人々を現実的に救済するためには、とにかくお金が必要である──この前提が、イエスのまわりでは共有されていたのである。

  

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沼田和也

ぬまた かずや

牧師・著述家

日本基督教団 牧師。1972年、兵庫県神戸市生まれ。高校を中退、引きこもる。その後、大検を経て受験浪人中、1995年、灘区にて阪神淡路大震災に遭遇。かろうじて入った大学も中退、再び引きこもるなどの紆余曲折を経た1998年、関西学院大学神学部に入学。2004年、同大学院神学研究科博士課程前期課程修了。そして伝道者の道へ。しかし2015年の初夏、職場でトラブルを起こし、精神科病院の閉鎖病棟に入院する。現在は東京都の小さな教会で再び牧師をしている。ツイッターは@numatakazuya)

 

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  • 沼田 和也
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